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ドキュメンタリー動画のコツ「面白いの連続はつまらない」
私の大先輩の言葉です。
ちょっとこれまでと違い「ノウハウ」っぽくはないかもしれませんが、まぁ聞いて下さい。
それは10年以上前に演出した番組でのこと。当時は民放で演出を担当していました。私も30代でバリバリ仕事をしていた時期です。報道や制作を経て色々な番組を休み無く量産していました。レギュラー番組を抱えながら特番もこなす日々。懐かしくもあり、辛くもある日々です。思い出したくないことも多々ありますが、そんな中で、この言葉は今も私の中に息づいている言葉なのです。
「面白いの連続はつまらない」
言われた当時は正直言って、そんな馬鹿なっ!と思っていました。どんな番組や映画でもすんげぇ面白いのは「すんげぇ面白い!の連続ぢゃないか!」と考えていたからです。
ところが、徐々に長尺の番組を担当するにつけ、そのことの意味が段々わかってきました。
例えば2時間の番組をフルスロットルでめちゃくちゃに詰め込んで息つく暇もないほどに面白く作ったとしたら、、、
途中で息切れがしてしまって、疲れちゃうんです。
そもそも人間の集中力なんて12分とかって言われているぐらいですから、一気に見せようと思ってもそれぐらいが限界。そう思うと、どれだけ気合いを入れて作っても、ふっと息をつく時間がなければ呼吸もできずに死んでしまうようなものなのです。見ている人が息もつけずに息絶えてしまっては本末転倒ですよね。見てもらうために作っているのですから。
だから、
緩急を覚えなくてはならない、のです。
ジェットコースターだって、はじめの坂を上るガタンガタンというじれったい時間があってこその「ウワァーッ!!!」があります。お化け屋敷でも安心の後に恐怖が待っています。お料理だって「ばっか食い」はおいしくありません。結局、同じものや同じ状況、同じ設定を与えられると慣れてしまってそれが「つまらない」になってしまうんですね。
映像の場合、私の経験から言わせていただくとせいぜい「10分」が勢いで押せる限界です。それ以上は、面白いの連続は通用しません。しかし、緩急の使い方を心得てくると30分でも1時間でも面白い映像を構成することができるようになります。
さぁ、そこであらためて「面白いの連続はつまらない」に戻ります。
長尺番組である程度その意味が経験的にわかってくるようになると、今度は短い尺の番組でもそれは全く同じなのだということが分かってきます。短い中にもブレスの瞬間が用意してあって、自然に息継ぎしながら視聴者に楽しんでもらうことが必要なんだと理解します。
番組では、ナレーション、音楽、テロップ、現場ノイズ、ON、カラコレ、特殊効果、SE、、、など様々な要素が複雑に関係し合って作品を作ります。それぞれの中に緩急があり、またその要素が一つになったときに緩急が生まれ、大きなうねりが感動を誘発します。大切なのはそういった流れが「自然」になることです。
唐突に思われるかもしれませんが、私は、
利休の
「花は野にあるように」
が究極の教えではないかと、今のところ考えています。