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映画館(ミニシアター)の未来について考えてみた
映画という芸術文化は大衆で共有することでより花開く、と信じています。
しかし現在の映画館興行は決して華やかではないし、田舎の映画館は潰れていく一方。 一時シネコンが盛り返したモノのやはりどこかでシネコンではかからない映画を求めています。シネコンで上映される映画はあくまで商業主義的なものであって文化的な色合いが薄いのです。 私自身学生の頃から映画にハマり色々な作品を見てきましたが、心に残る作品とはやはりエンターテイメント的でないものも必要です。ハリウッド大作は必要ないとは申しません。けれど、人生に深みを持たせてくれる映画に出会うためには(つまり人によって感動する作品も違う様に)世界中の様々な作品に出会って欲しいと思うのです。それは家の中で一人で見るというような内向的なものではなくやはり映画館で見て欲しいのです。 では一体どんな映画館(ミニシアター)がこれからの社会には必要となってくるのでしょうか? どんな映画館があれば人を惹きつけることができるのでしょうか?ワクワクする映画館ってどんな映画館なのでしょうか?
もちろんどんな映画館でも良いのかというと、そうではありません。個人的には映画館はもっとサロン的であって欲しいと思います。カフェがあってレストランがあって、たまには映画でなく演劇やライブ興行もする、そんな『文化芸術のたまり場』的なスペース。フランスのカフェ「ドゥ・マゴ」のような、とまではいかなくともそれっぽい場所があったらどんなにか素晴らしいでしょう。 それこそが文化の香りのする町というものです。なので、そんな映画館でありつつも現代人がワクワクするような仕掛けがないものか調べてみました。 まず、一冊の本をご紹介せねばなりません。
映画館(ミニシアター)のつくり方
「映画館(ミニシアター)のつくり方」という本です。これは雑誌「映画芸術」に連載されていた「映画館通信」をまとめたもので、実際は映画館の作り方というよりは、全国のミニシアターがどのようにユニークな経営をされているのか、を知るのに大変勉強になる内容となっています。もちろん、映画館を作る上で参考になることも多数あります。例えば、
・まず団体を組織して上映会を実施
・継続して上映会をすることでファン層を拡大
・その実績で映画館設立に向けて運動を開始
・出資金を募る(最低1000万から必要か)
・映画館(場所)の選定
・映画館は人口30万人程度以上の町で経営するのが真っ当
・映画の切替は早く、1スクリーンでも1日で3本上映、年間100本以上はやりたい
・映画上映だけでは厳しい現実を知っておくこと
・会員制にしてリピーターを増やす
・会報の発行などで情報発信する
・映画祭など開催して地域興しのきっかけを作る
・ワークショップを開催して市民参加型の映画館を目指す
といった内容です。こうしたことは全国のミニシアターが実践してきた内容ですので大変説得力があります。しかしその一方でまだまだ別の方法もあるのではないかと思わずにはいられません。映画館は世界中にありますし、ネットが普及している時代ですから、きっと驚くようなアイデアが世界中には存在していると思うのです。 ということで、ざっくりと調べました。 私が一番気になるのは「映画館とレストランの融合」です。 「アメリカ発 これからは映画館でディナーの時代 後編 - 海外トレンドリポート」
本格的なディナーを提供する映画館は、単に食事を提供するだけでなく、快適で、おしゃれで、高級感のある空間へと進化している。スタイリッシュな館内にバーやレストランを備えることで話題なのが「アイピックシアター(iPic THEATERS)」。2010年にアリゾナ州中央部にあるスコッツデールに1号館を出し、2013年夏には10館目をロサンゼルスにオープン予定だ。
エグゼクティブなペアシートにテーブルがついていてゆったりと食事と映画を楽しむことができるという「アイピックシアター」。テーブルには注文ボタンもついていて、ボタンを押せばすぐに注文を聞きに来てくれます。 米国ではこの映画館とレストランを融合した業態が受けているといいます。というのも、普段であれば劇場で映画を観ると2時間、その後に食事をして1時間から2時間となると3,4時間は覚悟しなければなりません。 しかし、食事をしながら映画を観ることができれば大変な時間の節約になる、というわけ。効率を考えてしまうところはアメリカっぽいですが、でもこれは決して効率だけの問題ではないと思います。普通、映画館では食べても良いモノは限られているから、その常識を越えてまるで家で寛いで映画を観ているような感覚で、しかもちょっと贅沢な感覚を得られるとすれば「一度は行ってみたい」と思うのは当然ではないでしょうか。
他にも世界中ではこんな映画館が話題になっています。
「+αな映画館 by AKAdd Star」
「CINE de CHEFセンタムシティー店(CJ CGV)」
「他では味わえない経験ができる世界の映画館トップ10」
「WESTIN ウェスティン台北のVIP映画館」
「ポップコーンだけじゃなく、本格的に食事できる映画館が米国で増加中。これからの映画館はこんな感じ?」
「レストラン感覚の映画館」
こちらの動画もStudio Movie Grillの紹介ビデオ。雰囲気がよくわかります。
こうしたサービスがアメリカで脚光を浴び始めているという現実を見るとその内日本にもこうした業態が誕生するのは目に見えています。しかしこれはあくまで大規模なシネコンタイプのこと。私はこの小規模版で劇場経営ができないものかと考えてみたいのですが、いかがなものでしょうか?
私の勝手なイメージとしてはブルーノートのような小規模のライブハウスみたいな劇場です。食事ができてお酒も飲めて大人の社交場のようなちょっと贅沢な時間を楽しめる場所。できれば食事やお酒にもこだわって、上映される映画に関連したものを提供したり…。いいと思うんですけどねぇ(笑)どうなのでしょうか? さて、そんなことを考えている最中、新しい話題が登場しました。 「懐かしの作品を「映画館で観られる」上映サービスが便利そう」 これは、「ドリパス」という新しいサービスだそうです。
「ドリパス」は、皆様からいただいた上映リクエストを元に、上映イベントを開催するためのサービスです。 ファンの皆様のチカラ(リクエストなど)で、あの作品の上映イベントを実現させてください!ファンばかりが集まる上映イベントは、普通の映画館での鑑賞とはまったく別物の満足感が味わえます。無料会員登録するだけでどなたでもリクエスト頂けます。
昔見た名画をもう一度大きなスクリーンで観たい!とか、見逃したあの映画を映画館で観たい!というリクエストに応えてくれるというもの。一定数がのリクエストが溜まれば、つまりチケットがさばければ映画公開に至るということだから劇場側も確実に利益計算ができることになります。これならメリットも大きいのではないだろうか。まるで、クラウドファンドの映画上映版といった感じです。
こうした新しいサービスを上手に融合させることができればミニシアターでもある程度期待のできる売上に繋がるなんてことにはならないでしょうか?